●19世紀英国の代表的な子供向け雑誌を復刻する新シリーズの第1弾。
●少女向け雑誌として階級を問わず人気を誇った、ガールズ・オウン・ペーパーの創刊号より4年分を復刻。
●恋愛・結婚についての読み物や、家事・服飾など生活に関する実用的アドバイス、人生相談などの投書欄等々、ヴィクトリア期の児童、女性文化、そして教育の研究に必携の一次文献。
編者より … 川端有子
1880年1月、私たち自身の雑誌がほしい、という少女たちの願いが実現し、『ガールズ・オウン・ペーパー』は生まれました。出版元の宗教叢書協会は、すでに少年向けの定期刊行雑誌『ボーイズ・オウン・ペーパー』を刊行し、大成功を収めていましたが、自分たちにふさわしい情報と、自分たち自身の文化の場を求める少女読者の声に大きな市場可能性を見出し、この少女雑誌を刊行する運びとなったのです。実用的内容、安価な価格設定で、余裕のある上流階級のレディのみならず、女中やタイピストなど働く少女たちもターゲットとし、さらに年齢層も、結婚するまでの若い女性全般をカバーする幅広い読者設定が功を奏し、タイトルを変えながらも1960年代まで続くロングセラーの女性誌となりました。
『ガールズ・オウン・ペーパー』は、ファッション記事や手芸のお手本はもちろん、小説、詩なども繊細な挿絵に彩られ、当時の若い女性の生活をヴィジュアルに示しています。当時の関心を反映して、少女にふさわしいスポーツ紹介、自然科学や家政学も導入されています。しかし、なんといっても興味深いのは、若い女性の悩みや相談事に答える通信欄です。女性の生き方に多様性が許され始めたころのこと、人生の出発点に立つ少女読者の最大の関心は、結婚と主婦生活についての心構えのみならず、高等教育の是非、職業選択と自立の可能性でした。読者の参加を許す初のメディアとして、この通信欄は貴重な時代の証言です。女性が人生でなすべきことについての規範が揺るぎつつあった時代を反映し、この雑誌自体はイデオロギー的に保守主義を取っていました。にもかかわらず、誌面で交わされる議論はそこにゆらぎと葛藤を示しています。
今回は創刊号から第四巻までの復刻です。女性をめぐる様々なイデオロギーの生きた証人として、少女たちの声を反映した貴重な文献として、19世紀の女性文化、児童文学、教育史の研究に欠かせない資料といえるでしょう。
収録巻号:
Vol. 1: #1-39 (Jan 80-Sept 80) c.640pp
Vol. 2: #40-91 (Oct 80-Sept 81) c.840pp
Vol. 3: #92-144 (Oct 81-Sept 82) c.865pp
Vol. 4: #145-196 (Oct 82-Sept 83) c.835pp
●シリーズ次回企画●
ヴィクトリア朝少年・少女雑誌 復刻シリーズ
第2回配本:ボーイズ・オウン・ペーパー 1879-1882年 全4巻+別冊解説
Boys Own Papers Vol. 1-4
監修・解説: 愛知県立大学 川端有子
New Introduction by Kimberley Reynolds, University of Newcastle upon Tyne
2007年末刊行予定
|