●本書の売上げは、全額東日本大震災被災者支援のため、日本赤十字社へ寄付されます。
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西洋に紹介された東北というと、まず英国人女性旅行家イザベラ・バードの名前があげられるでしょう。1878年に来日したバードは、新潟、福島から東北地方の日本海側を北海道へと旅します。途中宿泊した山形の内陸盆地の自然の美しさを「東洋のアルカディア」と称賛し、その旅行記『日本奥地紀行』(Unbeaten Tracks in Japan)は、今日も版を重ねるバードの代表作となりました。しかし、英米で広く読まれたこの旅行記の成功にもかかわらず、その後東北地方を訪れ、記録を残した西洋人は少なく、日本を広く扱った英文概説書や旅行ガイドに触れられた短い記述を除けば、この明治から昭和初期に、東北を海外に紹介した本格的英文書はほとんど知られていません。このように、近代日本と西洋の接触で、この地方が表舞台に立つことは一般にはあまりなかったといえますが、1880年代に来日し、仙台神学校、宮城女学校の創立に尽力したW.E.ホ一イ(W. E. Hoy, 1858−1927) やD.B.シュネーダー(D. B. Schneder,1857−1938) ら、米国改革派教会(Reformed Church in America)の宣教師は東北の近代教育の成立に大きな足跡を残し、彼らのキリスト教伝道学校を母体に東北学院、宮城学院等の教育機関が設立されてゆきました。
今回復刻出版いたしますTohoku, the Scotland of Japanは、前述ホ一イやシュネーダーの志を継ぎ、20世紀初頭に東北でキリスト教伝道や教育活動にあたっていた宣教師3名による、英語で書かれた初の東北案内といえる文献で、フィラデルフィアにて1918年に刊行されました。東北(6県に加え新潟も含む)の歴史、地理、宗教、産業や人々の生活などを記述した前半部分と、キリスト教伝道や東北学院、宮城学院での教育活動などを中心内容とする後半部分からなり、約165の項目がさらに細かい見出しに分けられ、東北事典としての利用もできるように編集されています。また、視覚的東北理解を助けるため、55点の写真やカラーの折り込み地図2点も加えられています。主筆者のクリストファー・ノッス(Christopher Noss, 1869-1934)は明治末期に来日、仙台で活動を始めた後、会津若松などに移り、青森でその生涯を終えた宣教師で、その間日本語教科書A Text-book of ColloquialJapanese (1903) も出版、まさに日本と東北に捧げた一生だったといえます。本書のタイトルは、ホーイの協力のもと東北学院と宮城学院を創立した、押川方義の言葉「東北をして日本に於けるスコットランドたらしめん」によるものと考えられますが、そこには大英帝国のなかのスコットランドのように、帝国日本のなかで独自の歴史、文化をはぐくむ東北に対する、100年前のアメリカ人の熱いまなざしが感じられます。
2011年3月11日の東日本大震災では、日本人だけでなく多くの外国人の方も被災され、不幸にして犠牲になった方もいらっしゃいます。一方、震災後には世界各地から救援隊が派遣され被災地で活動、世界からの支援も広がっています。世界の中での東北、そして東日本のすべての被災地の方々に思いを寄せ、100年前のアメリカで出版されたこの『英文東北案内』を復刻することにいたしました。 |