分野:シェイクスピア研究、英国演劇史、ヴィクトリア朝文化史

トマス・バウドラー編
『19世紀英国家庭のためのシェイクスピア戯曲全集』
復刻版 (全10巻+別冊解説書)

The Family Shakespeare,
in which nothing is added to the original text; but those words and
expressions are omitted which cannot with propriety be read aloud in a
family.
By Thomas Bowdler

復刻版監修・解説:金子雄司(中央大学教授)

 


2009年11月刊行 
(1820年改訂第2版ファクリミリ版) B6判
○ 約3,550頁
○ 本体価格\138,000
○ ISBN 978-4-902454-16-1

●性的・冒涜的表現を徹底的に削除、「換骨奪胎」されたシェイクスピア。「バウドラー化する」(boudlerize)という単語を生むほど大衆に浸透し、改版を重ねた大ベストセラー、初の完全復刻。
●バウドラー自身の編集による改訂第2版全10巻 (1820年)を復刻。
●19世紀イギリスのシェイクスピア受容の実態、また、当時の倫理観を知る上で、不可欠の一次文献。
● カルチュラルスタディーズ、特にセクシュアリティ、身体論の研究にも重要な視座を提供。

◆ バウドラー編『19世紀英国家庭のためのシェイクスピア全集』を推す
◆ 喜志哲雄(京都大学名誉教授)

 シェイクスピアに関わる人は無数にいるが、それが原因で自分の名前から英語の単語が生れた人は、おそらく十指にも満たないであろう。そういう極めて稀な人物のひとりがトマス・バウドラー(Thomas Bowdler, 1754-1825)とい うイギリス人の医師である。シェイクスピアの作品は確かに名作だが、卑猥な表現や冒涜的な表現がしばしば現れるので、そのままのかたちで家庭で読むのは具合が悪いと、彼は考え、不適切だと自分が判断した字句を削除したテクストをわざわざこしらえた。それが『19世紀英国家庭のためのシェイクスピア戯曲全集』(The Family Shakespeare)である。1807年の出版 で、 シェイクスピア劇20篇の削除版が収められている。これは実は彼の双生児の姉妹ヘンリエッタ・マライア・バウドラー(Henrietta Maria Bowdler, 1754-1830)の仕事であったらしいのだが、いずれにせよ、トマスが残りの作品をやはり無害なものにした版が、1818年に出版され、削除版は完成した。この本は非常によく売れ、文藝作品から差障りのある個所を削除することを意味する「バウドラー化する」(bowdlerize)という単語が生れた。
当然ながら、バウドラーは余計なことをした人間だと見なされている。しかし彼は当時の読者の道徳観を考慮してテクストを作ったのだから、この仕事がシェイクスピア受容史の非常に重要な一面を表していることは誰にも否定できない。十九世紀のシェイクスピア受容の実態を知るには、これほど好都合な本はない。あいにく大抵の研究者は、バウドラーを悪名高い人物と決めつけ、彼を軽視して来た嫌いがある。だがこの復刻版によって、わが国の研究者にとっても、バウドラーの仕事の詳細がようやく明らかになる。シェイクスピアの作品がどのように受容されて来たかという問題を真剣に研究しようとする人にとっては、これは不可欠の一次資料なのである。

Table of Contents

Volume 1:
Preface by Thomas Bowdler
Tempest
Two Gentlemen of Verona
Merry Wives of Windsor
Twelfth-Night: or, What You Will

Volume 2:
Preface to the Following Theatre Copy of Measure for Measure by Thomas
Bowdler
Measure for Measure
Much Ado about Nothing
Midsummer-night's Dream
Love's Labour's Lost

Volume 3:
Merchant of Venice
As You Like It
All's Well that Ends Well
Taming of the Shrew

Volume 4:
Winter's Tale
Comedy of Errors
Macbeth
King John

Volume 5:
The Life and Death of King Richard II
Preface of the Editor to the Two Parts of Henry IV
First Part of King Henry IV
Second Part of King Henry IV
King Henry V

Volume 6:
First Part of King Henry VI
Second Part of King Henry VI
Third Part of King Henry VI

Volume 7:
Life and Death of King Richard III
King Henry VIII
Troilus and Cressida

Volume 8:
Timon of Athens
Coriolanus
Julius Caesar
Anthony and Cleopatra

Volume 9:
Cymbeline
Titus Andronicus
King Lear

Volume 10:
Romeo and Juliet
Preface to Hamlet by Thomas Bowdler
Hamlet, Prince of Denmark
Preface to Othello by Thomas Bowdler
Othello, the Moor of Venice

 

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