●英国近代の始まりとともに「発見」された子どもに関する同時代文献集の第２回配本。
●１８世紀後半に刊行された稀覯文献１４点を復刻集成する。
編者より ― 子どもに関するイギリスの初期文献（1751-1800）
フェリス女学院大学教授 向井秀忠
「子ども史研究」という学問分野があることは、アニタ・ショルシュ著『絵でよむ子どもの社会史』（北本正章訳、新曜社）の巻末に添えられた「訳者あとがき」の中で教えられた。このようなひとつの学問分野として成立しているように、各時代ごとによって「子ども」観が大きく変化してきたことを容易に察することができる。例えば、ショルシュは、「子ども」については、16世紀かそれ以前には「下等動物」として扱われ、18世紀にはチャールズ・ラムによって亡くなった我が子が「小さな嫌われ者」と表現されていることなど、各時代の興味深い「子ども」観の証言を引いている。
出産死の確立が高く、子どもの生存率も低かった「多産多死型」の17世紀以前には、「子どもの死」が今よりも身近なものであったことは想像に難くない。このよう時代には、「家族の連続性」が求められ、子どもが死ぬと、まるで身代りになるかのように、次の子には亡くなった子どもの名前が付けられ、生き延びる子に至るまで同じ名前が何度も付けられることがあったという（北本『子ども観の社会史』新曜社）。そして、近代の宗教・経済・教育改革を経た18世紀に至ると、ジャン＝ジャック・ルソーらが「子ども」の生まれながらの美点を見出し、手を加えることなくそのままにしておくべき、と主張するなど、「子ども」観は決定的に変わっていく。しかしながら、19世紀には、そんな「子ども」観も、邪悪な心をもつ「神の小さな敵」（19世紀の児童書のベストセラー作家であるサミュエル・スプリングより）へと再び逆戻りする。
このように、時代によって「子ども」観は大きく変化しているのであるが、当然のことながら、「子ども」自身がそういった変化を記する文書や資料を残すことはない。そこで、各時代の「子ども」観を探るためには、しつけの意識や求められる礼儀作法を記した「子育て書」や「礼儀作法書」が貴重な手掛かりとなってくる。前回の18世紀前半に引き続き、今回は、フランス革命などの大きな出来事を経験する激動の18世紀後半のイギリスにおいて刊行された「子ども」をキイワードにした文献を集めた。これらの資料が、この時代のひとつの「子ども」観を概観するための興味深く貴重な資料集となることを確信している。
収録文献
Vol. 1: c. 270pp.
Bourn, Benjamin
A sure guide to Hell. In seven sections, containing directions to parents in the education of their children… 2nd edition
London, 1751, c.104pp.
Anon.
The young student's assistant; or literary entertainer... Part 3: Some serious reflections on the melancholy consequences which too naturally attend the neglect of parents, in the education of their children
London, 1752, c.13pp.
Well-Wisher to the Souls of Men
Five letters of advice: humbly offered I to parents: concerning the education of their children in the fear of God, II To children to excite them to remember their creator in the days of their youth
London, 1754, c.84pp.
Dawson, Benjamin
Some assistance offered to parents with respect to the religious education of their children…
London, 1759, c.28pp.
Kennett, White
The excellent daughter: a discourse very necessary to be given by all parents to their children,… To which is added several proper lessons of the duty of daughters,… 7th ed.
London, 1760, c.36pp.
Vol. 2: c.310pp.
Taylor, Philip, of Liverpool
Virtuous children the joy of their parents. A sermon to young people.
London, 1771, c.22pp.
Anon.
The laws respecting women, as they regard...the obligations of parent and child, Book the Fourth, Of the laws concerning parents and children; and the interests of infants (pp.349-449 only)
1777, c.110pp.
Lancaster, Thomas
A plan of education, for a limited number of young gentlement...those parents, who regard the health, comfort, and virtue of their children..
1794, c.79pp.
Beddoes, Thomas
A guide for self perservation & parental affection; or plain direction for enabling people to keep themselves and their children free from several common disorders.
London, 1793, c.24pp.
Anon.
Advice to parents on the management of their children in natural small pox, and during inoculation… 2nd ed.
London, 1797, c.66pp.
Vol. 3: c.465pp.
Salzmann, Christian Gotthilf
Elements of morality for the use of children,… translated from the German, 2 vols. in 1
London, 1793, c.460pp.
Vol. 4: c.415pp.
Lawson, George
The joy of children in wise children. A sermon.
Edinburgh, 1798, c.34pp.
Lovechild, Mrs.
Parsing lessons for young children: resolved into their elements for the assistance of parents and teachers London
1798, c.70pp.
Berquin, Amaud
The family book, or, children's journal. Consisting of moral and entertaining stories...From the French…
London, 1798, c.305pp.
◇好評既刊◇
『子どもの文化史ー英国１６‐１８世紀文献集成』
第1回：18世紀初期文献集 全4巻＋別冊解説（日本語）
Books on Children in 16th-18th Century Britain Series I (1701-1750)
第1回配本編集・解説： 同志社大学助教授 圓月優子
2006年12月刊行
本体価格\98,000 (本体セット）
Ａ５判 c. 1,910pp
ISBN: 4-902454-31-9
◇続刊-シリーズ最終配本◇】
第3回：16-17世紀文献集 全5巻＋別冊解説（日本語）
Books on Children in 16th-18th Century Britain Series III (1571-1700)
第3回配本編集・解説： 鈴木実佳 (静岡大学）
2009年秋刊行予定
価格未定
ISBN:978-4-902454-32-1 |
