Volume 1
Preface by Hidetada Mukai
No. 1(January 31, 1789) ? No. 30 (August 22, 1789), c.350 pp.
Volume 2
No. 30 (August 29, 1789) ? No. 60 (March 20, 1790), c.340 pp.
■別冊解説(約60頁)■
編集:向井秀忠(松山大学)
『ロイタラー』について 向井秀忠
『ロイタラー』と18世紀末英国の定期刊行物との関連 高桑晴子(専修大学)
『ロイタラー』と18世紀英国での学生による定期刊行物ブーム 吉野由利(一橋大学)
『ロイタラー』と兄ジェイムス・オースティン 土平紀子(神戸大学非常勤講師)
『ロイタラー』と兄ヘンリー・オースティン 中村裕子(神戸大学非常勤講師)
● Jane Austenの長兄James Austenが四男HenryとともにOxfordで約2年間にわたり発行した、College Periodical、The Loiterer 全60号の完全復刻です。
● 13歳のJaneが習作を始めた頃に兄たちが執筆した本誌の内容には、後のJaneの小説へのあきらかな影響が認められる点も多く、またJane自身の著作ではないかと議論されている記事も含まれます。
● このようにJane Austen文学の背景資料として極めて価値の高い文献であるものの、国内大学図書館の所蔵はほとんど確認されていません。
● 今回の復刻にあわせ、本誌に関する研究論文(日本語)5点が書き下ろされます。
「The Loitererについて」 三馬志伸(玉川大学助教授)
作家Jane Austenの誕生は家族の存在を抜きにして語ることはできない。オースティン一家は ‘bookish family’ で、教区牧師を務めていた父親をはじめとして、母親も子供たちもみな本好きであったという。8人兄弟の7番目として生まれたJaneは、そうした両親および兄や姉たちに囲まれ、幼い頃からいわば一流の家庭教師たちの「読書指導」を受けて育ったのであり、その彼女が自らペンを執るようになったのはごく自然な成り行きでもあった。こうした事実はどの伝記にも記されている事柄であるが、実際に家族の教養がどの程度のものであったのか、それを直接教えてくれるのがこのThe Loitererである。これはSt. John College卒業後もOxfordに留まっていた長兄の
Jamesが、同じCollegeに入学した弟Henryの助力を得て刊行したperiodicalで、1789年1月から1790年3月にかけて計60号が週刊で発行された。当時の定期刊行物を模倣したその内容は、たとえばJohnsonのThe Ramblerなどとは比ぶべくもないかもしれないが、しかし、Janeがどういう家庭環境で育ったのか、それを肌で知るための恰好の材料となるのは間違いないところである。特に興味深いのは、当時13歳であったはずのJaneの手によると思われる一文も掲載されていることで、これはこの企てが一家の中で大いに話題となっていたことの証でもある。オースティン一家の教養のほどを知るための貴重な資料としてThe Loitererの復刻版が刊行されることの意味は大きいといえるだろう。
*推薦文*「18世紀末の若者文化の資料としても」 青山学院大学 富山太佳夫
ジェイン・オースティンの兄二人がオックスフォードの学生時代に出していた定期刊行物全60号の復刻版と言われて、一体何が想像できるだろうか。具体的には、兄弟二人の書いたエッセイ60本が並んでいるということだ。そのタイトルを見てみれば、その内容は多少なりとも見当がつく。まず最初に来るのは、「初めに、事業計画」というエッセイで、なかなか気合が入っている。
他にどんなものがあるかと言えば、「歴史を学ぶ効用と利点」(大した内容ではない)、「英仏の国民性の違い」、「ポートワインの医学的効用」、「費用のかさむ現代の大学教育」(これにはまいった)、「現代は劣化していない」(これは面白い。証拠のひとつとして挙げられているのは、美女がふえたこと)、「愛ゆえに結婚することの愚」、「観相術を信用するべからず」、「愛してもいない男と結婚する女の子にとっての危険」。この通りである。メチャクチャと言えば言えるかもしれないが、逆にそのことが18世紀末の若者文化の姿を垣間見せてくれる。その意味では実に面白い。ひょっとしたら、若き日のワーズワスの周囲にもこんな若者文化があったのかと想像してしまう。社会史、文化史の資料としても実に興味!深いものである。こんな大事な資料をオースティン研究者を名乗るひとたちだけに独占させておくことはないはずだ。もったいないの一言に尽きる。
Contents of the First Volume
Introduction and Plan of the Work.
Little adherence to truth in common conversation. ? Sketch of a new
Newspaper.
The misfortunes of an Oxford Sportsman, in a letter from Christopher
Cockney.
Art of spending time ? Journal of a modern Oxford Man.
Anecdotes of the Doubtfuls, in a letter from one of the family.
Different opinions of the Public with respect to the Loiterer, and it’s
Authors.
Use and Advantage of studying History.
Disadvantages arising from misconduct at Oxford, in a letter from H. Homely.
Letter from Sophia Sentiment. ? Determination of the Loiterer in regard to
Tales, Novels, etc.
National difference of Character between the French and English ? Plan
proposed for improving each.
Diversion of Tuft-huntingdescribed ? Memoirs of a Tuft-Hunter in a letter
from Luke Lickspittle.
Letters from Abraham Steady; Chimericus; D. B. and Tom Witty.
Use and Abuse of Reviews ? a Visit from Eugenie who had suffered from their
attacks.
The medicine Virtues of Port-Wine recommended in a letter from Toby Philpot.
Heavy expences of a modern University Education; in a letter from
Chrysostom.
Letter from Philo Morpheus, advising the Loiterer to dream.
Modern times vindicated from the charge of Degeneracy.
Propriety of perpetual Fellowships considered ? Letters from Dismal Sour
Crout, and Jeremiale Dozeaway.
Variety of meanings annexed to the same word.- Explanation of the term Dash.
Study of Heraldry vindicated, in a letter from Edmund Escutcheon.
Hints to Young Clergymen respecting their behaviour at a Country Curacy.
Observations on several curious Advertisements in the Newspapers.
Vexations attending the pursuit, and possession of wealth, in a letter from
Indicus.
Contempt of Trade absurd, and illiberal.
OMAI’s description of British manners, and customs.
Pleasure of Elegant Society. ? Some Errors in Conversation pointed out.
Thoughts on Education - A New System recommended.
Complaint of a Wig.- Letter from Amicus.
Absurdity of marrying from Affection.
Characters of Dr. Villars, and Mr. Sensitive.
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