17世紀に始まった英国郵便(ロイヤル・メール)は、18世紀後半には郵便馬車による配達が始まり、郵便網も徐々に広がってゆきましたが、その近代化は1830年代にローランド・ヒルが郵便改革をとなえ、全国一律の郵便料金と料金の前納制度を確立、そして世界初の郵便切手(ペニー・ブラック)が創設されたことにより本格的に始まります。鉄道網が発達する19世紀半ばには郵送手段も馬車から鉄道に置き換えられ、街頭に郵便ポストが設置されたことなどもあり取扱い量が飛躍的に増大します。その後郵便小包や郵便為替などサービスも多様化し、英国社会における情報、コミュニケーションや物流の、質、量、スピードのすべてに大きな変革をもたらしました。
本文献集は、これまで資料がまとめられていなかった、この19世紀の英国郵便近代化に関する同時代の主要著作8点を収録する復刻集です。英国郵便史の概説書や、ローランド・ヒルを始め郵便近代化に関わった人物自身による著作を中心に、ヴィクトリア期の英国郵便の実態をできる限り生き生きと伝えてくれる文献を集め、一次史資料集として提供いたします。
郵便改革の影響はヴィクトリア期の人々の生活のすみずみにおよび、19世紀英国の社会経済や生活史の研究には不可避なテーマの一つとなっています。手紙が多用される文学作品の研究でも、郵便の近代化が作り出した新たな社会環境は作品理解のためにも重要な研究対象といえます。本文献集をどうぞ広くご利用ください。
【収録文献】
Vol. 1:
Joyce, Herbert
The History of the Post Office from its Establishment down to 1836
London: Richard Bentley & Son, 1893, c.470 pp.
Vol. 2:
Norway, Arthur H.
History of the Post-Office Packet Service between the Years 1793-1815
London: Macmillan & Co., 1895, c.325 pp.
Vol. 3:
Hill, Rowland
Post Office Reform: Its Importance and Practicability
London: Charles Knight, 1837, c.115 pp.
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Smyth, Eleanor C.
Sir Rowland Hill: The Story of a Great Reform, Told by His Daughter
London: T. Fisher Unwin, 1907, c.340 pp.
Vol. 4:
Lewins, William
Her Majesty's Mails: History of the Post-Office and an Industrial Account of its Present Condition, 2nd ed.
London: Sampson Low, Marston & Co. 1865, c.355 pp.
Vol. 5:
Hyde, James Wilson
The Royal Mail: Its Curiosities and Romance, 2nd ed.
Edinburgh & London: William Blackwood, 1885, c.405 pp.
Vol. 6:
Tombs, R. C.,
The Bristol Royal Mail, Post, Telegraph and Telephone
Bristol: J. W. Arrowsmith, nd. [c.1899], c.295 pp.
Vol. 7 & 8
Baines, F. E.,
Forty Years at the Post-Office, A Personal Narrative, Volume 1 & 2
London: Richard Bentley & Son, 1895, c.700 pp.
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