● 19世紀末から20世紀初頭のチベットを主題とした英国小説の集成
● オリエンタリズム、東西文化交流の文献資料
● 文学、東洋宗教の研究にも活用可能
19世紀末になっても、西洋人にとってチベットは謎にみちた別世界に過ぎませんでした。しかし1904年英国軍のこの地域への侵略は英国人の大きな関心を呼び、神秘の国チベットが突然現実の国として人々の前に現れました。この時代多くの公式な報告や研究が発表されますが、それより何より文学の世界でその影響は顕著になります。ラマ僧の秘法や昔話、聖都ラサへの旅と冒険、ロシア人や中国人の暗躍する地下社会、秘境での生活と永遠の生等々、あらたな「神話」が作り上げられてゆきます。
本書はチベットを題材とする小説が発表され始める19世紀末からピークを迎える1910年代までの長・短編小説を集成するものです。現在でも西洋人の一部にみられるチベット文化への誤解や偏見などがこれら小説中にも読み取れ、オリエンタリズム研究に大変興味深い題材を提供してくれます。
●予定収録文献●
John Geddie, Beyond the Himalayas: A Story of Travel and
Adventure in the Wilds of Thibet (1882)
Anon., The Secret of the Lamas (1889)
Claude Arthur Bray, Ivanda; or, The Pilgrim’s Quest (1894)
Alexander Macdonald Through the Heart of Tibet (1910)
J. Claverdon Wood The Stolen Grand Lama (c1917)
+ a selection of short stories.
■関連書籍のご案内■
インド学のヨーロッパでの受容 全6巻
European Discovery of India
- Key Indological Sources of Romanticism
編集及び解説: Michael Franklin, Cardiff University
約2600頁 / 2001年11月刊行 / 価格\123,000 (本体)/
ISBN:4-931444-57-1
英国の初代インド総督ヘイスティングスは統治の一環としてインド学を奨励し、1784年に設立されたベンガル・アジア協会の会長ウィリアム・ジョーンスとともに「オリエンタル・ルネッサンス」とも呼ばれる18世紀のインド・東洋学を英国・ヨーロッパに広めてゆきました。この時代数多く紹介されたインドの神話、中世文学は、ヨーロッパの文学者たちに東洋への憧憬をかきたて、ロマン主義文学を形作った要素の一つとなりました。特にゲーテ、ヘルダー、ノヴァリスなどドイツ・ロマン派にその影響は顕著です。
本書は、インド学生成期を代表する英語文献のなかから、18世紀ヨーロッパ文学・文化研究の資料として価値の高い著作、翻訳10点を復刻集成するものです。インド学の二人の雄ジョーンズ、コールブルックの著作やシュレーゲルの研究書、ウィルキンス、ウィルソンらのインド文学の英訳を収録いたします。編者による各著作の詳しい解説が書き下ろされています。
本書の特色
● ヨーロッパ・ロマン主義影響を与えたインド学英語著作集
● 初期インド学の稀覯文献
● コロニアリズム/ポスト・コロニアリズム研究にも重要収録文献明細
内容明細
Vol. 1: Charles Wilkins- The Bhagvat-Geeta, or Dialogues
of Kreeshna and Arjoon (London, 1785)
Charles Wilkins- The Heetopades of Veeshnoo-Sarma in a
Series of Connected Fables (Bath, 1787)
Vol. 2: Francis Gladwin (ed.)- The Asiatick Miscellany:
consisting of original productions, translations, fugitive
pieces, imitations and extracts from curious publications,
Vol. 1 (Calcutta, 1785)
Vol.3: Sir William Jones (trans.)- Sacontala; or the Fable
Ring: an Indian drama. By Calidas (Calcutta, 1789) Sir
William Jones (trans.)- Gitabovinda (1789) William Hodges-
Travels in India, During the years 1780-83 (London, 1793)
Vol. 4: Carl Wilhelm Friedrich von Schlegel, 'On the Language
and Wisdom of the Indians' (1808) from The Aesthetic and
Miscellaneous Works of F. von
Schlegel. Translated from German by E. J. Millington (London,
1849)
Horace Hayman Wilson (trans.)- The Meghaduta; or, Cloud
Messenger; a poem by Kalidasa (London, 1814)
Vol. 5: Horace Hayman Wilson (trans.)- The Vishnu Purana,
translated from the original Sanscrit, and illustrated
by notes derived chiefly from other Puranas (London 1840)
Vol.6: Henry Thomas Colebrooke- Essays on the Religion
and Philosophy of the Hindus (London, 1837)
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