科学が一般大衆へ広く普及した19世紀英国のポピュラー・サイエンス書を復刻する叢書が発刊されます。第一回配本は、この時代の児童向けの科学書の集成です。
児童教育の進んだ19世紀の英国では、科学教育への関心も教育者、宗教者のあいだで高まり、それに応える出版界は数多くの子供むけ科学入門書や読物を世に送り出しました。これらは、児童教育史研究だけでなく児童文学や19世紀英国のさまざまな側面を知るためにも非常に興味深い資料ですが、いままで系統的に集められたりリプリントされることもなく、日本の研究者にとってもほとんど目にすることのなかった文献類です。
今回のセットは、当時一般にも名前の知られるようになっていたサイエンス・ライターによる科学書から、科学教育の一翼を担ったSPCKのようなキリスト教普及団体による出版物まで幅広く目を配り、計7タイトルを集成します。このなかにはバックリーのThe
Fairy-Land of Science のように「図解理科仙郷」として明治期に翻訳され、日本でのポピュラア・サイエンス書の先駆けの一つとなったものも含まれています。図版も数多く含み、19世紀の英国を肌で感じさせてくれる出版です。全体の構成を解説する序文に加え、各書の解題が各巻に書き下ろされています。
■内容明細■
第1 & 2 巻
[486pp & 463pp]
シリーズ序:by Bernard Lightman (4pp)
序文:by Aileen Fyfe [10pp] 解題:by Aileen Fyfe [5pp]
[John Aikin and Anna Barbauld]
Evenings at Home (London: J. Johnson, 1792‐6), 6 vols.
bound as 2
著者はユニテリアン派に属した兄妹。150頁前後の小冊子で6回にわたり刊行され、家庭で楽しみながら学ぶ科学を意図している。18世紀末から19世紀初頭にはやった'instructive
and amusing'なスタイルの典型的出版物。
第3巻 [401pp]
(図版20)
解題:by James A. Secord [5pp]
Rev. T. Wilson (ed.) [Samuel Clark]
Peter Parley's Wonders of the Earth, Sky and Sea, (London:
Darton and Clark, [1837]), xvi, 336pp, 20 plates
地球のなぞを多くの図版とともに解き明かす。
第4巻 [336pp]
(イラスト多数)
解題:by Aileen Fyfe [10pp]
[Charles Williams]
Wonders of the Waters (London: Religious Tract Society,
[1842]) iv, 160pp,
illustrations
[Sarah Windsor Tomlinson]
First Steps in General Knowledge. Part 1. The Starry Heavens
(London: Printed for the Society for Promoting Christian
Knowledge, 1846) 137pp
19世紀の児童教育に先駆的役割をはたした、キリスト教2団体の科学入門。特に、1830年以降これらの団体は科学をはじめ近代的なテーマのキリスト教子弟への教育に苦心し、また力を注いだ。
第5巻 [597pp](図版35)
解題:by Suzanne Sheffield [5pp]
Margaret Gatty
Parables of Nature, with a Memoir of the author by J.
H. Ewing (new and complete ed., London: G. Bell &
Sons, 1880) xxviii, 492pp, 34 plates
「自然の教え」と題された本書で、著者は自然の驚異は神の創造がなせるものであると説いている。
第6巻 [476pp]
(イラスト多数)
解題:by James A. Secord [5pp]
John Henry Pepper
The Boy's Playbook of Science (London: Routledge, Warne,
and Routledge, 1860)
vii, 440pp, illustrations
少年向けに家庭でゲーム感覚での科学の学習を意図した理科絵本。
第7巻 [298pp]
(図版3)
Introduction by Barbara T. Gates [5pp]
Arabella B. Buckley
The Fairy-Land of Science (London: Edward Stanford, 1879)
vii, 276, + 3 plates
20世紀にはいっても版を重ねたビクトリア朝時代を代表する科学入門書。1887年に山縣悌三郎による邦訳「図解理科仙郷」が10分冊で出版され、日本における科学啓蒙書の嚆矢となった。
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