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分野:英文学(中世・世紀末文学)、ヴィクトリア朝文化、美学・ラファエロ前派、キリスト教思想

復刻集成 クリスティーナ・ロセッティ散文著作集 全4巻
Prose Works of Christina Rossetti
編集・序文: Maria Keaton,Marquette University

2003年10月刊行
本体セット価:¥73,000-
c. 1,600 pp
ISBN 4-901481-67-3

クリスティーナ・ロセッティの散文作品の集成


ロセッティの詩作品の理解にも必携


英国ヴィクトリア朝文学、芸術、思想研究に

ヴィクトリア朝を代表する女性詩人クリスティーナ・ロセッティの散文著作の初めての復刻集成です。

Christina Georgina Rossetti (1830-1894)はイタリア人の両親のもとロンドンに生まれます。詩人でキングス・カレッジの教授であった父親の影響もあり、幼少時代より文学、芸術に親しんでいた彼女は、兄ダンテ・ガブリエル・ロセッティやウィリアム・モリスらのラファエロ前派運動にかかわり、兄の絵画作品「受胎告知」のマリアなど多くの美術作品のモデルとなります。同時に12歳の頃から詩作を始めていた彼女は、Ellen Alleyneというペンネームで、ラファエロ前派の機関誌 The Germにその作品を発表し始め、Goblin Market, Sing Songなど今日でもよる知られる詩集や童謡集が出版されます。

敬虔な国教会の信者であったクリスティーナ・ロセッティの韻文作品は、キリスト教思想をその内に秘めていましたが、その傾向は1874年に大病を患った後さらに深まります。今回の散文集は、この時期の隠遁に近い生活のなかから産み出された、宗教性、精神性の極めて高い著作4点の集成です。これらの作品は、Sing Songのなかの自然観と、精神的自叙伝ともいえるTime Flies(本集成第3巻)で展開される思索との関連などが指摘されてはきたものの、最近まで省みられることも少なく、その全貌を把握することも困難でした。詩のテーマとして死や悲恋などを多く扱った彼女の内面や精神の軌跡が、これらの著作から読み取れますが、それと同時に、オックスフォード運動が盛んであったヴィクトリア朝時代のキリスト教思想の文献としても大変興味深いものです。

現在活発な研究の進むラファエロ前派研究や、ロセッティの詩を理解するうえで不可欠な文献であるだけでなく、広く英国19世紀末の文学・思想研究資料としてもどうぞご注目ください。

 

■内容明細■
Vol. 1: Called To Be Saints: The Minor Festivals Devotionally Studied. London: Society for the Propagation of Christian Knowledge, 1881, xix + 519pp.
Vol. 2: Letter And Spirit: Notes on The Commandments. London: SPCK, 1883, 206pp.
Vol. 3: Time Flies: A Reading Diary. London: SPCK, 1885, 280pp.
Vol. 4: The Face Of the Deep: A Devotional Commentary On The Apocalypse. London: SPCK, 1892, 552pp.

 

◆推薦文

大阪女子大学人文社会学部 教授 安藤幸江

クリスティーナ・ジョージーナ・ロセッティ(Christina Georgina Rossetti, 1830-94)は、ヴィクトリア朝を代表する女性詩人として日本でも有名で、彼女の『ゴブリン・マーケット』(Goblin Market, 1862)や『シング・ソング童謡集』(Sing-Song A Nursery Rhyme Book, 1872)は日本語にも翻訳されて、親しまれています。
 
彼女はイタリアから亡命してきた父とイタリア系イギリス人の母との間に生まれ、愛情豊かな家庭で育ちました。宗教は、母の影響を受け、修道女になった姉と同様、イギリス国教でした。彼女の信仰心は、二人の男性からの求婚を断るほど、強いものでした。
彼女は、この世では報われない愛が来世、神の国で成就されることを、詩のなかで願いました。また、彼女は、若い頃は美貌に恵まれ、兄たちの絵のモデルを務めましたが、やがて病魔に冒され、つらい日々を送りました。このような彼女を支えたのは厚い信仰心で、後年は宗教的な散文を、イギリス国教の一大組織である「キリスト教知識普及協会」(Society for Promoting Christian Knowledge)から出版しました。

このたび、それらのなかから、次の重要な散文が復刻出版されます。『聖人として召されて―信心深く研究された小さな祝祭(聖人伝)』(Called to Be Saints: The Minor Festivals Devotionally Studied, 1881)、『文字と真意―十戒注釈』(Letter and Spirit: Notes on The Commandments, 1883)、『光陰矢のごとし―読む日記(元旦から大晦日まで、日記形式でキリスト教におけるさまざまな行事と聖人の祝日をたどった散文と詩)』(Time Flies: A Reading Diary, 1885)、『海面―ヨハネ黙示録の信仰的解釈』(The Face of the Deep: A Devotional Commentary on The pocalypse, 1892)。

タイトルが示しますように、これらの作品は、彼女の詩を理解する上で、必須であるばかりではなく、英文学の基盤になっているキリスト教を理解するのに、絶好の書です。
私たちは、クリスティーナ・ロセッティという思いやりと優しさに溢れた詩人を通して、イギリス人の中に深く根をおろしているキリスト教を肌身に感じることができるでしょう。