日本をアメリカに紹介した文学といえば、まっさきにラフカディオ・ハーンの名前があげられますが、日本開国後、19世紀後半から今世紀初頭のアメリカでは、あらゆる分野で日本趣味がブームと呼べるほどの高まりをみせていました。工芸品におけるティファニー、ロングフェロ−やパウンドの詩、ユージン・オニールやソーントン・ワイルダーの演劇、ライトの建築等々、ジャポニスムの影響が顕著な芸術は枚挙にいとまがありません。それはキモノ・スタイルの流行したファッションにもみられるように人々の生活のなかでも花開き、大衆文学のなかにも浸透してゆきました。
本書は、この時代に発表された数多くの日本趣味の小説のなかから約20点を選び復刻いたします。第1期は19世紀末の小説10点を収録、第2期では日本ブームが急激に収束する1920年代までの作品を収める予定です。
「蝶々夫人」を除けば、これらの小説群はいままでほとんど省みられることのなかったものですが、当時のアメリカ民衆に広く読まれたこれらの作品は、比較文化研究だけでなく、アメリカ文化研究にも看過できない一次文献でしょう。また、こういった日本趣味を読み解く作業は、コロニアリズム/ポスト・コロニアリズム研究へつながってゆきますし、しばしば登場する理想化された日本女性の描写は、興味深いジェンダー研究のテーマともなるでしょう。
編者Charles Wordellによる詳細な解説(別冊日本語訳付き)が書き下ろされています。
■ 内容明細■
Volume 1
Edward GREEY (1835-1888)
Young Americans in Japan
Boston, 1882, 385pp
Volume 2
Louis WERTHEIMBER
A Muramasa Blade
Boston, 1887, 204pp
Edward Howard HOUSE (1836-1901)
Yone Santo
Chicago, c1888, 285pp
Volume 3
Arthur Collins MACLAY (1853-1930)
Mito Yashiki
New York, 1889, 462pp
Volume 4
William Elliott GRIFFIS (1843-1928)
Honda the Samurai
Boston, c1890, 390pp
Volume 5
William Elliott GRIFFIS (1843-1928)
In the Mikado's Service
Boston, 1901, 361pp
Volume 6
Mrs Eaton Winnifred BABCOCK (1879-1954) ("Onoto Watanna")
A Japanese Nightingale
New York, 1901, 225pp
Mrs Eaton Winnifred BABCOCK (1879-1954) ("Onoto Watanna")
Tama
New York, 1910, 243pp
Volume 7
John Luther LONG (1861-1927)
Madame Butterfly
New York, 1898, 239pp
Alice Mabel BACON (1858-1918)
In the Land of the Gods
Boston, 1905, 285pp
|