1906年パリで発刊された本書は、西欧語とインド諸言語によって著されたジャイナに関する写本、研究書、雑誌論文852点を網羅し、約一世紀を経た現在でも20世紀前の文献検索に最も信頼出来る書誌として、その価値は色あせていません。宗教としてのジャイナだけでなく、文学、歴史、考古学、芸術も含み、分野別の分類に加え書名・著者索引も備えています。また、各項目にはジャイナ研究者として名高い編者ゲリノによる註釈が付されています。底本は当時のヨーロッパ東洋学の中心でもあった、ギメ美術館のシリーズ
'Annales du Musee Guimet: Bibliotheque d'Etudes' 中で出版されたもので、1893年のシカゴ世界宗教会議後に広がった西欧のアジア宗教学の一大成果ともいえる古典的書物です。
国内大学図書館での所蔵も極めて少ない本書を、全ての人文系図書館、研究室にお薦めいたします。
シリーズ続刊
Edition Synapseでは19世紀末から20世紀初頭に西欧で出版されたアジア学のレファレンスを、シリーズ復刻いたします。来春には次の2点が予定されております。
第3回配本
ブレットシュナイダー著
中国における
ヨーロッパ人の植物発見史 全2巻
Emil Vasilievich Bretschneider
History of European Botanical Discoveries in China, 2
volumes
2002年6月刊行
c1184pp
4-901481-00-2
\48,000 (本体)
底本:1898刊
第2回配本
英領マラヤ事典 全1巻
Nicholas Belfield Dennys
A Descriptive Dictionary of British Malaya, 1 volume
2002年6月刊行
c430pp
4-901481-01-0
\24,800 (本体)
底本:1894刊
第4回配本
オリエンタル年代記(仏語初版)
デュガ著
「東洋学者列伝」 全2巻
Gustave Dugat
Histoire des Orientalistes de l'Europe du XIIe au XIXe
siecle, 2 vols., 1868-70.
モール著
「東洋研究の27年」 全2巻
Jules Mohl, Vingts-sept ans d'histoire des etudes orientales:
rapports faits a la Societe Asiatique de Paris de 1840
a 1868, 2 vols., 1879-80.
Otto Rosenberg, Introduction
to the Study of Buddism according to Material Preserved
in Japan and China, Part 1, Vocabulary: A Survey of Buddhist
Terms and Names, 1 vol., 1916.
関連既刊書
J.G.R. Forlong 著「比較宗教百科」全3巻
Cyclopaedia of Religions 'Faith of Man'
1,716pp
ISBN 4-931444-04-0
価格¥60,000 (本体セット価格)
底本:1906年初版
推薦文「最大級の古典の復刊を祝して」
宗教学者 山折哲雄
「比較宗教百科」といえば、すぐにも二つの大辞典が思い浮かぶ。一つがへースティングズの「宗教・倫理百科」(Hastings,
J. ed.; Encyclopedia of Religion and Ethics, 12 vols.,
1908-26)、 もう一つがエリアーデの「宗教百科」(Eliade, M. ed.,; Encyclopedia
of Religion, 16 vols., 1987)である。ヘースティングズ「百科」とエリアーデ「百科」のあいだにはすでに半世紀以上の時間が流れている。だが、ヘースティングズ「百科」が刊行される直前に、もう一つ逸すべからざる野心的な「比較宗教百科」が編集されていたのである。それがJ.G.R.
フォーロングのこの三巻本だった。1906年の刊行というから、ヘースティングズ「百科」刊行の二年前ということになる。
このフォーロングという人物のキャリアがまさに破天荒で、面白い。スコットランドに生まれ、陸軍に入ってインドに赴き、技術・工学の分野で大活躍。その間、30年以上にわたってインド、ビルマはもちろん、ギリシャ、エジプトなど世界各地を旅行して、膨大な資料を収集している。大英帝国の爛熟期が生んだ異能の一人だが、ときあたかもあのフレーザーを中心とする民族学、人類学の草創期にあたっていた。その両者に共通する関心はだた一つ、世界の諸民族のあいだにちらばる儀礼、伝承、慣習、信仰をはじめ、天文、
動植物、言語、人種などの知識と情報を網羅的に集めて分類し、多角的、重層的な比較を試みることだった。フォーロングはその仕事に25年以上の歳月をかけ、単独の力でこの「比較宗教百科」を完成させたのである。
見所の一つに、たとえばフレーザーの「金枝篇」にたいする反論なども見出せるが、それよりも何よりも、ヘースティングズ「百科」に与えたであろう刺激と影響は見逃すことが出来ないはずだ。ここに、この領域における未知の大著、最大級の古典の復刊を祝して、いささか推薦の辞をのべる次第である。
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