Hans Marcus

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Art Technique

The Craft of Graphic Art A Journey Through 500 Years of Printing Technique

1997年10月刊行
限定120部
(内、僅少部数のみ日本へ入荷)
本体価格:\2,200,000

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オリジナル版画と17世紀の原版(銅板)で版画500年の歴史を網羅する、画期的なコレクションが限定出版されます。このコレクションは古版画のドイツ人コレクタ−、書誌学者として知られた、故Hans Marcus 氏が生前に自らの膨大な収集品を系統的に編集し、後世の版画史研究の普及、教育に役立てたいと企画したもので、その遺志を継いだ英国の古書肆、復刻出版社Thoemmes社により遂に実現したものです。
各セットには、15世紀の木版画から19世紀末のエッチングまで、それぞれ異なる版画史上の代表的技法をもちいて作られたオリジナルの版画32枚と解説書(120ペ−ジ、英・独2ヵ国語版)が含まれ、500 年の版画史を見渡すコレクションが一挙に手元に揃うように構成されています。また、全てのセットに、17世紀のヨ−ロッパを代表する版画工の一人Matthaus Merian が1625年に発表したIcone Biblicaeシリ−ズに用いた銅版の原版が1 枚入ります。この時代の原版の入手は今ではヨ−ロッパの美術市場でも大変難しく、このコレクションの価値を更に高めています。 


Hans Marcus
ドイツ古書業界の第一人者。
1951年アムステルダムで開業の後、1956年デュッセルドルフにも、1870年までのものを扱った古書・絵画店を開設。1984年に移転した店舗は、17世紀末のバロック調の館を改修し、あらゆる分野の愛書家や絵画コレクターが集う地となる。その深い知識による彼のコレクションは、収集家や愛好家から高い評価を得ている。1992年に80歳で死去。


コレクションの構成
1. Woodcut (Germany 1493)
2. Metal cut (France 1507)
3. Colour-printed Japanese woodcut, mid-19th century
4. Chiaroscuro woodcut (Belgium 1645)
5. Wood engraving (England 1792)
6. Wood engraving, 19th century (France)
7. Wood engraving printed in colours (England 1884)
8. Original copperplate by Matt
s Merian (1625)
9. New print from the plate on old paper
10.Old print from the plate, used when wrapping the plate for storage
11.Copper engraving, 18th century. Proof before letters on title
12.The same as No. 11 after completion (Germany 1749-1776)
13.Copper engraving, hand coloured (Germany 1737-1745)
14. Copper engraving, printed in colour from one plate and finished by hand, 18th century
15. Copper engraving (France 1799-1808)
16. The same as No.15, printed in colour from one plate
17. Mezzotint
18. Mezzotint by Earlom ( England 1777-1819)
19. Steel engraving
20. Etching, 17th century
21. Etching, late 19th century
22. Aquatint
23. Aquatint, hand coloured
24. Aquatint, printed in colour (France 1787-1791)
25. Crayon manner engraving
26. Stipple engraving
27. Nature print (England 1859-1860)
28. Chalk-style lithograph (Daumier)
29. Chalk-style lithograph, hand coloured (Gavarni)
30. Pen and ink style lithograph
31.Single tint lithograph
32.Multiple tint lithograph
33.Chromolithograph (France 1901-1910)


推薦文
「イメージ文化は版画によって担われていた」
聖徳大学教授 坂本 満


「版画」というと、特殊な技法によってつくられた「芸術品」を指すとお考えのかたもおられるかもしれませんが、わたくしどもの身近にある印刷物のすべては、実は「版画」と共通の技法によって印刷されたものであります。近年はゼロックスやコンピューターによるアートも珍しくはないのです。 ただご注意願いたいのは、印刷の技法によってその表現が大なり小なり違うということがあります。その違い方の特性を芸術家は有効に利用して「芸術」をつくりだすわけです。現代は映像(イメージ)の時代と言われてすでにかなり時間がたっています。TV、ヴィデオ、映画の他にも雑誌・新聞などのあらゆる刊行物に何かしらのイメージのともなわないものはないといってもよいほど、イメージがそこいらじゅうに氾濫しているのですが、19世紀後期までは、イメージというのはわずかな画家の手描きのものの他には「版画」によってしかそれは存在していなかったのです。このことは、今日では想像するのに努力を必要とするほどの相違といえます。つまりイメージ文化とは、それまでは「版画」によって担われていたということなのです。それだけに版画は「芸術」とは限りません。ことに書物の挿絵などにおいては、解剖学にせよ、博物学、天文学、幾何学などなど、いずれも版画によって知識を交換していたわけですから、まさに最大・唯一の情報源でもありました。
情報の精度については、西欧では15世紀のルネッサンス以来、ある程度までは客観的で正確さをもった再現が可能になっていました。そういう精度の点では、凸版木版画より凹版の銅版画技法のほうが便利だったようです。
銅版画というと、エッチングがよく知られていますが、それは銅版画の中の一つの技法にすぎません。エッチングより古くてより「高貴な」技法とされていたのは、ビュランというのみの一種で直接銅版を彫るエングレイヴィングという技法です。これとエッチングの併用が17・18世紀には多かったのですが、18世紀末になると木口木版でビュランを用いるウッド・エングレイヴィング技法が発明されて、19世紀には石版画やスティール(鋼鉄)版と並んで新聞・雑誌・書籍によく用いられました。 どちらもビュランで彫られているので一見似ているのですが、よく見ますと線が黒いのが銅版画であり、線が白くぬけているのが木口木版ということになります。 見慣れないと気づかないことがあります。その他にも、18世紀末に発明された平板の石版画はさまざまな表現の可能性をもっていますから、素人にも使えるし、木版や銅版とも似たような効果を見せることがあります。もちろん、石版固有の表現もあります。こうして書き記しはじめますと、技法と表現の問題だけでもまだまだ問題があります。さらに刷りの善し悪しとか、上の製造(手漉きからパルプ紙)、印刷機(手動から機械刷、輪転機)、写真の問題などとても語りきれません。このような版画の技法と表現を学ぶには、まず版画の原作品を手に取り、実例を比較、鑑賞することが不可欠といえます。今回商品化されてこのコレクションは、これらの基本の好例を一望の元に見ることを可能にしてくれました。版画の選択も技法史の全体像を把握できるようによく編集されています。その昔苦労しながら手探りで学習したわたくしなどは、たいそう羨ましく、是非このコレクションが今後の日本における美術史、版画史、印刷史の研究に役立たれることを祈って止みません。